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【コラム】英ワールドカップとナショナルアカデミーに見るセーリングの近未来

 6月12日、「セーリングワールドカップ・ウェイマス&ポートランド」最終日は、各クラス上位10チームによるメダルレースがおこなわれ、RS:X級以外をライブ中継する大掛かりなイベントとなりました。(BHM編集部)

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セーラーズカードで盛り上がる子どもたち。photo by Junichi Hirai

 北京五輪から始まったメダルレースは、ロンドン、リオ、そして東京へと継続されていきそうです。ワールドセーリングが考えているのは、ワールドカップによるセーリング競技のプロ化であり、さらにメダルレースのライブ中継を世界へ配信していこうという流れにあります。ワールドセーリングは、このライブ中継を(例えばアメリカズカップのように。アメリカズカップが成功しているのか分かりませんが)興行していきたいという思惑もあるようです。

 過去のオリンピック艇種問題(メディア受けする艇種を選ぶ)しかり、テレビ放映を意識した競技へ進む流れは、みなさんも予想できるでしょうが、実際にはまだまだ発展途上です。こうした考えを打ち出しているのはワールドセーリング(本部はイギリス・サウサンプトンにあります)であり、セーリング大国イギリスの意思が反映されています。

 イギリスは、4人にひとりがセーリング経験があると聞いたことがあります。まわりを海に囲まれた島国にも関わらず、セーリング文化が育まれなかった日本と合致しない部分があるのは当たり前で、どちらが良い悪いというのではなく、わたしたちが「セーリングはこういう流れに進もうとしている」ことを知っておくのは間違いではないと思います。

 編集長がこの大会を取材していて驚いたことがあります。これは先の記事にも書きましたが、本大会が開催されている「ウェイマス&ポートランド・ナショナルセーリングアカデミー」にたくさんの子どもたちが、水辺スポーツを学ぶために訪れています。

 詳しい方に話を聞くと、ジュニアからユースまで学校単位でおこなわれる臨海学校のようなもので、一週間ほど宿泊施設に泊まって自然やスポーツについて学ぶプログラム。そのなかで水辺スポーツが取り入れられていて、ここで全員がセーリングを体験するのだそう。

 こうした事業の運営費は国が負担していて、子供たちの水辺教育につかわれ、ナショナルセーリングアカデミーや全英のヨットクラブで働く人たちの給料になるとのこと。国民が水辺スポーツに親しむ文化は、こうして作られ、まわりに支えられ継続していくのかと感心しました(また、ナショナルセーリングアカデミーについて、機会があれば詳しく取材してみたいと思いました)。

 もうひとつ驚いたのが、メダルレースを見に来たジュニアセーラーたちが、セーラーズカードを手にしていたこと。これは、イギリス(GBR)ナショナルチーム写真がプリントされたポストカードで、子どもたちがカードを持って好きな選手にサインをねだるわけです。陸で待っている子どもたちは、「ジル・スコット、ジル・スコットがいい」と一番人気はフィン級の世界チャンピオンのようで、口をそろえてはしゃいでいました。

 日本では考えられない光景に、正直に言って驚きました。セーラーのプロ化をすすめるワールドセーリングの考え方は、ことイギリスでは現実的なことなのかもしれないし、同様にRYA(イギリスヨット協会。日本のJSAFにあたる)が、セーラーズカードを制作して子どもたちに配布していることにも驚かされ、もし日本選手が金メダルを取ったり、世界チャンピオンが誕生したら、こんなシーンが見られるのかな? と想像してみたりしました。

 日本では考えにくい「驚き」です。子どもたちが学校の教育のなかで水辺スポーツ(ひとり乗り、二人乗りのディンギーやウインドサーフィン、カヌー、ドラゴンボート等)を遊びながらでも体験して、セーリングをはじめたジュニアセーラーは、メダリストや世界チャンピオンにあこがれる。。。

 ワールドセーリングの方向性は、イギリスだけを見れば間違ってはいないように思えます。ただし、この認識が共通のものとして他国でも通用するのかと言うと、そうではありません。とはいえ、「ナショナルセーリングアカデミー」で遊ぶ子どもたちや、セーラーにサインをねだるジュニアセーラーを見て、こんなセーリング環境があったらいいな、と思えたのも確かなことでした。

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インタビューを受ける470級優勝のクロアチア。彼らもリオ五輪の金メダル候補です。photo by Junichi Hirai

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ナショナルセーリングアカデミーでセーリング体験する子どもたち。photo by Junichi Hirai

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ウェイマス&ポートランド・ナショナルセーリングアカデミー

◎Sailing World Cup Weymouth and Portland
http://www.sailing.org/worldcup/regattas/weymouthandportland_2016.php

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