遠州灘と星空。夜の回航物語

  • 09
  • Mar

夕日が沈み、やがて夜が訪れる。夜の海には非現実的な世界が待っている。撮影:平井淳一

サンケイビジネスアイ・コラム(53)
遠州灘と星空。夜の回航物語

7月最終週、外洋ヨットレースに出場するため、神奈川県三浦市三崎町から三重県南伊勢町五カ所湾までセーリングクルーザーを回航した。目的地まで150マイル。海が荒れなければ24時間で到着できる計画だ。

早朝、出港した時はおだやかだったが、相模湾の中央に来ると次第に南風が強くなってきた。小刻みに波が立ち、バウ(船先)がバウンドするように叩かれる。後方で舵を握っていたら、時折、砕けた波がスプレーになって顔に襲いかかってきた。出港してすぐさまずぶ濡れである。しかし、悪条件が長く続くわけはない。夕方になるころに風は落ち着き、強風を吹きおろしていた雲も晴れ、伊豆半島先端の石廊崎を越える頃には、うつくしい夕日が西へ沈んでいった。

伊豆半島をかわして遠州灘へ向かう。この区間は陸から離れてしまうため、携帯電話もつながらなくなるエリア。日が沈むと一気にまわりが暗くなり、船のデッキには数字を表示する航海計器と自艇の位置を知らせる航海灯の明かりだけがある。空を見上げるといつの間にか満点の星空があらわれた。プラネタリウムよりも多い、大小さまざまな星がある。空を見上げて数分待てば、大きな流れ星を見ることができた。

船のゆっくりした引き波に反応して、夜光虫が青白く光る。ライトがついているわけでもないのに、空にも海にもふんだんに光があるようだ。実際には弱い光量だろうが、暗闇に目が慣れているせいで、まぶしいぐらいに感じられる。

海は毎回違った表情を見せてくれる。時にはきびしく、わたしたちを鍛えてくれるが、何物にも代えがたい宝物を見せてくれることもある。周囲がゆっくりと白んでくると三重県志摩半島の先端にある大王崎が見えてきた。目的地の五ヶ所湾まであと少しだ。

夜が明ける直前、大きな雨雲が迫り、またたく間に目も開けていられないほどの強烈なスコールにみまわれた。乾いたウエアが再びずぶ濡れである。今回は、ついているのか、ついていないのか分からない。それでも一生の思い出に残る、いい回航だったことに違いない。(2011.7 文/平井淳一)

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