片手は船のために、片手は自分のために

  • 28
  • Mar

※サンケイビジネスアイ紙で連載していたコラムを紹介します。


今秋開幕する世界一周レースの緊急時トレーニングの様子。写真は救命筏で漂流し、ヘリから救助されることを想定している。撮影 Ian Roman

サンケイビジネスアイ・コラム(59)
片手は船のために、片手は自分のために

 海にはさまざまな表情がある。穏やかに見える海でも、一瞬で命を奪ってしまう危うさがあることを忘れてはならない。これは波打ち際でも、遠く沖まで出る時でも同じこと。残念ながら海の事故、船の事故は、なくならないのが現実だ。

 むかし、帆船乗りの先輩に「片手は船のために、片手は自分のために使え」という教えを受けたことがある。船に乗ったら自分の命は自分で守るのが鉄則。荒れた海に限らず、船の上で作業する場合は、自分を守る用意を必ずしておかなければならない。

 ライフジャケットの着用や命綱の役目を持つハーネスは必ず用意すること。さらに、その装備が本当に役立つかどうかも確認しておく。ガスボンベを使用した膨張式のライフジャケットなら定期的にボンベを交換し、気室部分に空気穴があいていないかを実際に膨らませてみる。また、仲間が落水した場合の救助方法や陸上との連絡手段、漂流時の食料や水の保管。はじめて乗る船なら、救命筏がどこに保管されているのか知っておくことも重要だ。

 もし、船外へ投げ出された場合、服装が救助の明暗を分けることもある。以前、衣類を着たままプールに飛び込んで、どの程度泳げるかを自ら実験したことがある。水を含んで重くなった服を着ていると想像以上にカラダは動かない。ジーンズやセーター、さらにブーツを履いて飛び込んだ時は最悪だった。下半身から水中に沈んでいくのが分かり、泳ぐスピードも距離もわずか。短時間で体力が奪われてしまい、プール実験でも危険を感じたほどだ。

 わたしたちがヨットで外洋に出る時は、緊急用の安全装備を必ず用意する。外洋ヨットレースでは大会規則として安全装備の搭載が義務づけられているが、その装備を使えるようにしておかなければ意味がない。片手は船のために、片手は自分のために。そして自分の命は自分で守る。船に乗るなら忘れてはならない言葉である。(2011.8 文/平井淳一)

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