全日本インカレ 展望と解説(470級・後編)

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  • Oct

『琵琶湖全日本インカレ 470級・後編』
文/外道無量院・なまちゃん


前年度全日本インカレ470級優勝の関西学院大。写真は9月蒲郡のインカレ個人戦よりphoto by Junichi Hirai

外道
 関西学院大は、前回の2007年琵琶湖大会でクラス優勝した後、続く2008、2009年は、どちらも最終レースでの逆転劇。その最終レースは両方とも変なレースだったし、少し運が向けば3連覇していたかも知れないが、それよりも昨年の優勝には驚いたな。

 さて、次に「3強」に続く勢力をみてみよう。関東インカレで優勝した慶應義塾大。主将の飯野啓太(慶應義塾・4年)/成川健一(慶應義塾・1年)はエース艇に相応しい戦い振りで、前半は懸念された3番艇の長堀友香(1年・青山学院)/小野正人(4年・山手学院)を快走に導き、後半は自らチーム艇を引っ張り、9本中8本をシングルでまとめ、見事に早稲田の追撃を振り切り、逃げ切った。

 2番艇の西内翔(4年・慶應義塾)も、エースクルーの小川晋平(4年・慶應義塾)を乗せながら、中盤まで今ひとつ不調だったものの、早稲田に追い詰められた最終日の2本をともにシングルでまとめて、土壇場で底力を見せた。

なま
 関東インカレで早稲田を破った慶應義塾ですが、ある意味ここが一番不気味な存在でしょうね。それは、「堤(旧姓・佐竹)美都子」コーチの采配である。関東インカレでは470は早稲田の方が上だと私は思っておりました。しかし初日から一度も首位を明け渡すことなく見事優勝。

 これは選手の力だけでなく、コーチ力によるものも大きいと私は感じました。さらに、コーチ自身も選手時代は、琵琶湖での絶対的な自信をもっている。選手がどこまで吸収できるかにもかかっているが、470陣はエース・飯野艇がいるし、また作戦を実行できる力があると思う。あっと驚く結果になるかもしれません。

外道
 三田会(OB会)が現役支援に熱心なのには感心する。関東インカレでも、早稲田の応援艇が1艇のみだったのに、慶應は4〜5艇出ていた。

 その早稲田大は、関東では最有力視されながら、結局は慶應義塾大を最後まで捉えきれずに終って準優勝。エース艇・市川航平(早大学院・4年)/石原裕太(早大学院・3年)、女子インカレ・チャンプの山口祥世(長崎工・3年)/谷口諒介(桐朋・3年)、

 そして3番艇のルーキー・小泉颯作(光・1年)/石橋賢人(早大学院・4年)は昨年の国体で少年SS級を制したチャンプ。今年の国体でも並み居るメンバーを相手に成年男子470級で入賞と健闘した。国体開催県として公費が注ぎ込まれてジュニア・ユース期に強化された典型的な「国体男」だが、早稲田入学を機に「インカレ男」に変身できれば、将来を含めて面白い存在となろう。

なま
 後のシルシではっきりしますが、私の早稲田への評価は高いですよ。ルーキー・小泉颯作は国体で名だたる社会人メンバー相手に大健闘して入賞したし、女子インチャンプの山口祥世も琵琶湖の軽風で一段と戦力アップにつながるのでは? あとは、主将の市川航平が復調すれば、首位争いだって可能な布陣と思うなぁ・・・。

外道
 2008年西宮大会で、早稲田大・53年振りの総合優勝を果たし、その後の総合3連覇につないだインカレの戦い方に「新機軸」を生み出した関口功志、神谷航路の両コーチが、何があったのかモチベーションを落としているらしい。今年は現地に帯同しないという話を聞いて、私は逆に評価を割り引いた。

 そういえば、関東インカレでもコーチボート上に両者の姿は見えなかった。代わって、2009年牛窓大会で総合2連覇・スナイプクラス初優勝を達成した時の主将、鈴木恵詞が「代理指揮官」として帯同とのこと。どこまで、「3連覇時代の遺産」を引き継ぎ、指示を徹底できるか?

 しかし、前回の琵琶湖大会(2007年)時、小松一憲コーチ(当時)が、470に原田龍之介、村山航、新郷雅史、スナイプに梅野任司、神谷航路、古谷信玄というスキッパー陣を揃え、畠山監督共々、「創部史上最強のチーム、完全優勝!」と、勇んで乗り込んできたが、総合どころか、クラス優勝もなし。当時のメンバーと比較すると、どうしても重いシルシは?


早稲田大主将の市川艇。早稲田の持つ勝利の方程式が生きるか?photo by Junichi Hirai

なま
 琵琶湖とは非常に相性が悪い『日大』ですが、全艇が1・2年生という若い布陣。中村睦宏(2年・中村三陽)が復調の兆し、その他2艇も徹底的に中村艇についていくレースができたなら、波乱をおこせるかもしれない。

 実際、関東インカレでも、そのようなレースを意識して実践してたように見えました。ルーキー若林友世も間違いなく風域は琵琶湖向き、面白い存在となるでしょう。しかし、問題は2番艇の平松が、どこまで復調できるか? にかかってるといえます。

外道
 昨年準優勝の日大では、2年生ながら名門のエースを張る中村睦宏(中村三陽・2年)が中心的存在。秋インカレからクルーを清原遼(2年・中村三陽)に変えて復調気味も、スコアのバラツキが気になった。琵琶湖への適性もどうか? 不調だった平松良弘(碧南工・2年)も復調すればソコソコには走れるだろうし、3番艇の若林友世(藤嶺学園鵠沼・1年)は、持ち前の意外性とともに、琵琶湖向きとも思えるので、案外、面白い存在だ。

 彼女なんか、「チームとして縛って走らせる」よりは、逆に「放し飼い」にして自由に走らせると「大化け」するタイプなんじゃないか? オリンピックウィークでも、時々、びっくりするような良い走りをする事があったな。

なま
 外道さん、全日本インカレでそれはないよ。特に琵琶湖ではね…。後で説明しますが、それぞれがバラバラで戦って通用するほど今年の日大は力がないって。昔の黄金時代じゃあるまいし。ところで、その他のチームに関してはどうですかね?

外道
 過去のデータからは、地元勢に注目しなければならないのだが、立命館大は、水域大会で金沢大に負けているようでは入賞までが精一杯か?

 穴として面白いのは関西大。両クラスで各2艇以上が女子スキッパーという構成も、今年は琵琶湖開催という事で、逆にプラスに働くことも考えられる。昨年不出場の無念を晴らすのには、絶好の開催場所といえる。

 九州大会で日経大に続き準優勝した九州大には、インターハイで複数年の上位入賞実績がある田中航輝(1年・清風)が、一浪の末に初志貫徹して難関入試を突破して入部しており、どこまで戦えるか楽しみだ。

 関東4位の明海大も、脇永達也コーチの指導を受け、念願の両クラス揃っての全日本出場を果たして意気あがる。

なま
 ほとんど誰も気がついてないでしょうが、関東勢では珍しく明海大の国府田監督が、長くやった磯辺高監督時代には琵琶湖と相性が良いのも面白いですよね。初の両クラス出場となり、しかもその舞台が琵琶湖。なんとなく縁がありそうな感じですよね。ひょっとすると!?(笑)

 最近のインカレでは、「チームレース」でなく、個人戦の延長的な戦いとなっているような気がします。いわば「線と線」の戦いでなく、「点と点」というべきか? 日経大のように圧倒的な実力をもつチームなら「点と点」の戦い方でも十分通用すると思われるが、昨年のように惨敗というケースもある。

 ある意味、インカレにエースはいらないんです。従って、風に恵まれそうにもない琵琶湖では、3艇の中で指揮・指示系統が出来ているチームがあるかどうか? が優勝へのポイントになってくるでしょう。

 その辺りを踏まえての予想にしたいと思います。

なまちゃんの470級予想
◎・・・・・早稲田大
◯・・・・・日本経済大
▲・・・・・関西学院大
△・・・・・同志社大
△・・・・・慶應義塾大
△・・・・・日本大
△・・・・・関西大

 昨年、総合4連覇を逃した『早稲田』だったが、昨年もそうだったが、今年の布陣を見ても実力はある。あとはどこまでチームレースに徹することができるか? 3連覇できたのだから、それなりのノウハウは残ってるはず。強力なエースは存在しないが、高いレベルだと私は考えてます。

 日経大は72回大会では決して悪いわけではなかったようですけどね。やはり英語で自滅している。その辺りを全艇が意識できるかどうかですよね〜。さすがに2年連続で同じ失敗は繰り返さないとみて、対抗にしてみました。

外道
 「微・軽風」を予想して、意外にもお互いに「一番人気」確実の日経大を本命に推さない穴狙いのシルシとなった。パンパンの良馬場なら「鉄板の本命馬」が、「重馬場」苦手で馬場が渋るとカラッキシダメ、という事か? 「競馬に例えるな」との非難を承知で敢えて言えば、本来、名馬は条件を問わずに走るものだ。

 名セーラーだってそうではないか? もう少し分かりやすく野球に例えて言えば、直球にはメッポウ強いが変化球はカラキシ打てないとか、どんなに難しい大飛球でも取るが単純なゴロは苦手では、名打者・名手とは言えないのと同じだ。それでは、私も印にまとめてみる。

外道無量院の470級予想
◎・・・・・関西学院大
◯・・・・・同志社大
▲・・・・・日本経済大
△・・・・・慶應義塾大
△・・・・・早稲田大
△・・・・・関西大
△・・・・・日本大
△・・・・・九州大
△・・・・・明海大

 日経大の位置付けに悩んだが、一歩踏み込んで、「O旗掲揚」未満の微・軽風になると、特にこのチームに対し、「第三の敵」の目が光る事も折り込んだ。

 良い風が吹いた場合は圧勝だろうが、この時期の琵琶湖ではそれも期待薄。ただし、昨年の江の島のような事はあるまい。事前に分かった条件に「対応策」を用意していないとは思えないからだ。反面、普段やりなれないスタイルで戦うと、リズムが狂って却って上手く行かなくなるケースもありえるが・・・・。

 「勝てばあっさり」、と言うことを含んで、敢えて単穴とさせて頂いた。結論は昨年の江の島大会優勝と今年の琵琶湖での定期戦で同志社を破っている実績を重視し、本命・関西学院、対抗・同志社。

 4番手には関東を制した慶應義塾大。堤美都子コーチは、2004年アテネ五輪女子470級代表で、同志社OGのオリンピアン。京都ユース時代からの琵琶湖育ち。

 また、弟分・慶應義塾高の堤智章コーチも1989年・津開催の470級世界選手権チャンプ(堤兄弟・兄)で、同じく同志社大OB(親子2代)・元同大監督というだけでなく、びわこジュニア〜膳所高という生粋の「琵琶湖育ち」だ。夫婦で琵琶湖対策を上手く注入できれば確かに面白い存在だ。

 実力者揃いのスキッパー陣を揃える早稲田大は、選手個々の比較では誰が見ても慶應を上回るのは間違いないが、関東インカレの結果というより、前述した理由により評価を割り引いた。

(スナイプ級へつづく)

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