世界一周ヴァンデ・グローブ、白石康次郎スタート直前インタビュー・前編

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 11月6日、4年に一度開催される単独無寄港世界一周ヨットレース「ヴァンデ・グローブ」がスタートします。スタートはフランス西部の港町、レ・サーブル=ドロンヌ。約50パーセントの完走率、世界一過酷といわれるこのヨットレースに、アジア人として初出場する白石康次郎選手をインタビューしました。スタートを控えた白石選手の様子を紹介します。(BHM編集部)

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仏レ・サーブル=ドロンヌでヴァンデ・グローブのスタート準備を進めている白石康次郎選手。photo by Junichi Hirai

スタート直前の心境。「ヴァンデ・グローブのおもしろさが伝わればうれしい」

BHM編集長:いよいよスタートが迫って来ました。いまはどんな気持ちですか?

白石:ヴァンデ・グローブを存分に楽しませてもらいたい。そんな気持ちでいます。緊張感はありません。今回のぼくの役目は、(1)日本人初出場・初完走(2)ヴァンデ・グローブの素晴らしさを伝えること(3)トップ10を狙うことです。みなさんも一緒にヴァンデ・グローブをたのしんでもらえたらうれしいですね。

BHM編集長:10月15日、全出場艇がレ・サーブル=ドロンヌに集合し、ヴァンデ・グローブ・ビレッジがオープンしました。スタート前なのに毎日たくさんの人が訪れています。ヴァンデ・グローブが、これほど地元に根付いた大きなヨットレースイベントとは知りませんでした。

白石:このレースは、1位でフィニッシュする選手も最後の選手も、同じ数の拍手で迎えてくれます。世界一周ヨットレースというイベントをフランス全体でたのしんでいます。レースの結果もさることながら、それぞれの選手が持っている物語を大切にしている。ストーリーはみな違います。ぼくのようにアジア初出場もいる。日本のみなさんには、まずは、こんなおもしろい世界一周レースがあるんだ、ということを知ってもらいたい。

BHM編集長:今年のヴァンデ・グローブは、29艇/10カ国が出場します。スキッパーの年齢は23歳から66歳までと幅広く、またボートのタイプのさまざまあります。

白石:ヴァンデ・グローブは、セーリングエリートしか出場できない、というヨットレースではありません。アマチュアも出られるし、手作りで出る人もいる。いろいろな形のボートがある。ぼくが見ていてもおもしろい。古い船は、あたらしい船にかなわないかもしれません。でも、ハンディキャップなどなく一緒にやる。シンプルな戦いです。

BHM編集長:ヴァンデ・グローブ・ビレッジに入ってから(全艇が10月15日までに集合しました)、どんな準備をしていましたか?

白石:ほかのスキッパーは休暇を取って休んでますが、ぼくたちは現地で最終調整しています。なにせ4月上旬にボートを購入して出場を決めた最後のスキッパーなので、やることがたくさんある。ほかのチームが2年掛かりでやることを、短期間でやる必要がありました。

BHM編集長:白石さんと〈スピリット・オブ・ユーコーIV〉は、地元ファンに人気ですね。毎日、さん橋に人だかりができています。

白石:ぼくたちのチーム規模は大きくないし、ワークスチームに比べて予算も少ない。だからファンはとっても大切です。世界のファンを味方につけてがんばろうと思っています(笑)。

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新しいハルカラーとスポンサー名が入ったニューセールで挑む〈スピリット・オブ・ユーコーIV〉。photo by Yoichi Yabe

夢を実現させるのに特別な魔法はない。好きなことやり続けてきたから今がある

BHM編集長:いま30年前からあこがれてきたヴァンデ・グローブの舞台に立っています。白石さんは、夢を実現させるために、どんなことを思い描いて行動してきましたか?

白石:ぼくは、仲間と楽しく、仲良く、元気に、やりたいことをやってきた。それ以外のことをしていません。自分が大好きなことをやってきただけなんです。

BHM編集長:白石さんのように夢を実現できる人は、多くないかもしれません。夢を叶えたい人はどんな行動をとったら良いのでしょう?

白石:好きなことをやり続けていると、どこかで「好きなことばかりやっていてはダメだよ。ほかのこともやりなさい」と言われる。でも、ぼくはそうは思わない。好きなことをやってここまで来たからです。だから「自分の好きなことをやりな」って声を掛ける。ぼくが言えるのはそれぐらいです。夢を叶えるのに、特別な魔法はないんです。

BHM編集長:あたらしい挑戦に尻込みしたり、失敗することを恐れたりしないんですか?

白石:失敗ばかり、恥をかいてばかりいます。ぼくは、ヴァンデ・グローブに出場するのは初めてだから、他のスキッパーになんでも質問しちゃう。そんなことも知らないのか、と思われているかもしれません。でも、だれも最初から全部できるわけではない。失敗することで実力がついてくるものです。失敗して、また失敗して、きっと3回目には成功しますよ。

BHM編集長:師匠である多田雄幸さん(第1回BOCチャンレンジ優勝。白石さんは多田さんの遺志を継いで〈スピリット・オブ・ユーコー〉と名付けています)から、どんなことを教わりましたか?

白石:多田さんからは、楽しむことを教わりました。直接教えてもらったのではなく、楽しんでいる姿を見て学びました。多田さんが、世界の外洋レースに挑戦して突破したように、ぼくもヴァンデ・グローブを完走して、突破したいですね。

※インタビュー後編へ続く

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白石康次郎。1967年5月8日、東京生まれ、鎌倉育ち。神奈川県立三崎水産高(現・神奈川県立海洋科学高)卒。高校卒業後、外洋セーラーの多田雄幸に師事。93年単独無寄港世界一周(当時世界最年少)、03年アラウンドアローン、06年5オーシャンズ出場。08年には〈GITANA13〉にクルーで乗艇し、サンフランシスコ〜横浜世界最速横断記録を更新。ヴァンデ・グローブで4度目の世界一周へ挑む。

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レ・サーブル=ドロンヌ沖を走る〈スピリット・オブ・ユーコーIV〉。カンティングキール、ウォータバラスト、ツインラダーを備えるIMOCA60(IMOCA=インターナショナル・モノハル・オーシャン・クラス・アソシエーション)。photo by Yoichi Yabe

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回転式のナビステーション。ここで気象情報、外部との通信、チャート作業をおこないます。キャビン床下はウォータバラストになっていてフラットな形状。photo by Junichi Hirai

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ビレッジに並んだ出場艇(IMOCA60)。第8回ヴァンデ・グローブは29艇がエントリーしています。photo by Junichi Hirai

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仏記者からインタビューを受ける白石選手。さん橋には毎日たくさんのファンが見学に訪れています。セーリングイベントの規模はアメリカズカップにも劣らず。セーラーだけでなく、子どもからお年寄りまで地元ファンが支えています。photo by Junichi Hirai

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