リオ五輪レーザーラジアル級日本代表、土居愛実インタビュー

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  • May

 8月に開催されるリオ五輪まで100日を切りました。これまでの流れを振り返ると、五輪直前時期になると右肩上がりに急成長する選手が登場します。五輪本番のキーパーソン、台風の目となる選手です。レーザーラジアル級代表の土居愛実選手も、「急成長組」のひとりといえるでしょう。11月世界選手権8位、2月ヨーロッパ選手権7位、4月世界選手権9位。このところ主要国際大会でトップ10入りを果たしているのです。BHM編集長が土居愛実選手をインタビューしました。(BHM編集部)

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土居愛実。1993年8月29日生まれ。横浜市出身。慶応大・環境情報学部在学。兄・一斗(リオ五輪470級代表)の影響で小学2年から横浜ジュニアでセーリングをはじめ、2007年別府OP級全日本選手権で総合3位、ユースでラジアルに転向し数々の国際大会に出場。2012年ロンドン五輪代表(31位)。2013年ISAFワールドテストイベント1位、2014年デルタロイドレガッタ3位、仁川アジア大会2位。特技はダンス、ピアノ

◎ただいま急成長中。「8月リオ五輪まで、まだまだ上がります!」

BHM編集長:今年に入ってから五輪本番まで、ものすごい過密スケジュールを組んでいますね。オーストラリアにはじまり、スペイン、リオ、メキシコ、これからリオ、オランダ、イギリス、リオ…。日本チームのなかで一番ハードかもしれません。

土居愛実:オリンピックが終わった時、ヨットが嫌いになっているぐらいに練習したい(笑)。いま、成績があがっているので、レースに出るのがたのしいし、五輪までまだまだ成長すると思っています。いま、モチベーション高いです。

BHM編集長:トップグループで戦うことに手応えを感じている?

土居愛実:はい、あります。誰よりも練習をしてきている実感があるし、誰よりも成長していると思う。リオでメダルを取りたい、という気持ちが強くなっています。この後の数カ月でどこまで上がって行けるのか、たのしみです。

BHM編集長:ロンドン五輪に出場した時といまでは、自身のセーリングやヨットレースに対する考え方は、どのように変わりましたか?

土居愛実:ロンドンの時は、ユースからあがってきて直前の世界選手権で代表になって、すぐに本番だったから、世界で誰が強いのか、どんな雰囲気のレースなのか、全く分からなかった。当時は「やるしかない」という気持ち。いまは、まわりの選手や自分の成績も分かるし、「いまこれを克服したら、もう少し前に行ける」というのもわかる。早くレースに出て、ここも、あれも直したいと思っています。

BHM編集長:いま土居選手は、アーサー・コーチ(アーサー・ブレッド氏)とふたりで行動することが多く、日本人のサポートはだれもいません。海外遠征が続いていますが、そうした生活には慣れましたか? 

土居愛実:うーん、、、ダメです。出発前になると熱を出したりするし、去年の世界選手権でも4日間、3月の遠征前にも寝込んでしまった。ひとりで遠征に行くこと(以前は怖かった)には慣れたけれど、ストレスは貯まりますね。ただ、これも試練だと思っています。こういう状況は、必ずあるものだから。

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ボートスピードのアップが安定した成績につながっているという土居愛実。リオの海面は「もちろん風も重要ですが、それよりも潮の影響が強いですね」とのこと。photo by Junichi Hirai

◎オランダとの練習でつかんだダウンウインドの技術と自信

BHM編集部:普段はどんな練習をしていますか? たとえば、リオの現地合宿や大会前のトレーニングなどで。

土居愛実:リオでは海面調査が主です。オランダのマリット(マリット・ボウミスタ。ロンドン五輪銀メダル)と一緒に練習していて、いくつかのレース海面に行ってコース練習をします。リオは強い潮が転流するので、その辺の見極めが重要だと考えています。

BHM編集部:世界のトップセーラーであり、リオ五輪金メダル候補のマリットと練習できる機会は、そうあるものではありません。どうして、一緒に練習することになったんですか?

土居愛実:わたしは軽風のボートスピードが良く、彼女にとって軽風を走る時の良い相手なんだと思います。わたしにとって最高の環境で、マリットの技術を盗んでいます。彼女と練習するようになって一段階成長しました。

BHM編集部:成長した部分というのは、具体的にどんな部分ですか?

土居愛実:ひとつはダウンウインドです。カラダの使い方、波の乗せ方、セールトリム、ポジショニング、コース等いろいろありますが、後ろを走っていて彼女の動きを目で見ることが勉強になる。抜かれたらよ〜く見て技を盗む(笑)。それと、コースやタクティクスが安定してきたことが、成績につながっていると思います。

BHM編集部:練習中はビデオを撮って動作確認しているのでしょうか?

土居愛実:いえ、ビデオは撮りません。マリットが神経質なほどビデオに撮られるのを嫌っていて、ほかの選手が練習に加わるときは、ダウンウインドに入ると手を抜くというか、わざと遅れて走ったりする。自身のセーリングは絶対に撮影させません。その辺は、かなりシビアになっていますね。

BHM編集部:オリンピックが近づいてきて、外部を遮断した独自の練習が目立ってきていますね。470でも同じようなことがあるけれど、(チャーター艇でおこなわれる)レーザー級は道具を隠す必要はなく、選手の動作が最大の武器になります。動きを隠すというのも興味深いです。もっとも他の艇種でも、ライバル同士が一緒にトレーニングすることはありえないけれども。

土居愛実:今年はヨーロッパの大会と、リオ現地、それにメキシコの世界選手権があり、それぞれ場所が遠いので、選手は自身の目的に合わせて大会を選んで出場しています。だから、全員が同一場所で活動することはなく、他国の選手がどこでどんな活動をしているのか、わからない部分もある。

BHM編集部:すでに五輪の戦いは始まっているんですね。各選手、情報を隠すことが心理戦になる、という。いま土居選手が課題にしているのは、どんなことですか?

土居愛実:トップ10に入るようになってきたけれど、メダルを争うためには、もうひとつ壁があります。そこで戦えるようになりたいです。いまも強風が課題で、体重をあと1キロ増やしたい。これがむずかしいんですけれど…。

BHM編集部:土居選手はリオ五輪だけでなく東京も視野に入れて活動していますが、どんなビジョンを思い描いているんでしょうか?

土居愛実:自分の国で、それも自分がピークの年齢(2020年は27歳)の時に開催されるなんて、信じられないことです。東京五輪で金メダルを取って、応援してくれている方々に良いところを見てもらいたいですね。もちろんリオでも金メダルが目標です!

BHM編集部:この1年の成長ぶりを見ていると、無理なことではないように思います。土居選手、ありがとうございました。

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揃ってリオ五輪に出場する土居兄妹。練習計画が異なるため兄妹が出会う機会は多くありませんが、仲の良い兄妹です。性格は違うけれど、編集長が撮影した写真をチェックしたがるところはそっくり。photo by Junichi Hirai

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