クリッパー世界一周レースで落水者を救助

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14.04.13_01
 世界のセーリングニュースを紹介するデストップニュース最新号です。まずは、3月30日現地時間13時13分に起きたクリッパー世界一周レースの落水事故から。出場艇〈Derry~Londonderry~Doire〉(英)のクルーAndrew Taylorさん(46歳)が、セールチェンジのためバウで作業していた際、波に叩かれて艇外へ投げ出されてしまいました。(BHM編集部)


デストップニュース2014年15号。クリッパー世界一周レース、海南島のクルーザーレース、MOD70〈スピンドリフト〉の建造などが紹介されています

 場所は、陸地の見えない太平洋のど真ん中です。Andrewさんはテザー(命綱)をフックしていない状態でした。カラダは投げ出され、その後、〈Derry~Londonderry~Doire〉は不幸にも彼を見失ってしまいます。

 すぐさま〈Derry~Londonderry~Doire〉の救助作業がはじまりました。ヨットのオンボードでは、即座にGPSのMOB(Man Over Board)システムを作動。これは、落水者の位置をボタンひとつでGPSにプロットするものです。

 ヨットはセールを降ろしてエンジン始動するまで走り続け、落水者は流され続けます。波高4メートル以上もあるような太平洋上では(事故当時35ノット吹いていました)、落水者を見失う可能性は高いと考えられます。そのため位置情報をプロットすることは最重要作業となります。

 救助されたのは落水から約90分後。MOBに加えて、もうひとつ救助に役立ったのは、Andrewさんが、PLB(パーソナル・ロケーター・ビーコン。個人用の遭難信号発信機)を所持していたことでした。PLBの作動で衛星通信で遭難信号が発信され、落水者の位置情報を(アメリカなら沿岸警備隊、日本なら海上保安庁?経由で)確認できるというものです。

※昨年、バルクヘッドマガジンでも記事にしましたが、海外のオフショアレース、ロングクルーズではPLBを携帯するのが一般的です。日本では電波法に関係する法令から、所持、使用が許可されていません。それでも使用する方法はあるようですが、法を犯す行為となるため編集部からの発言は控えます。

 Andrewさんは、落水時に右舷側のラダーに衝突して怪我をしたものの意識はありました。アウターで着用していたのはドライスーツ+ライフジャケット。救助された時、彼は低体温状態だったようですが、ドライスーツを着ていたこともよかったのかもしれません。

 その後、〈Derry~Londonderry~Doire〉は4月12日にサンフランシスコへ到着し、Andrewさんは病院で治療と検査を受けているとのことです。

 クリッパー世界一周レースはアマチュアセーラーによる世界一周レースですが、救助トレーニングは繰り返しおこなわれてきたそうです。この事故のはじまりは、デッキ作業中にテザーをフックしていなかったこと(それ以前に、セールチェンジのタイミングは合っていたのかという問題もあるかもしれません)。危険なシチュエーションでしたが、Andrewさんはいくつもの幸運が重なって救助されたといえます。

・もし、落水が昼ではなく夜だったら?
・ドライスーツを着ていなかったら?
・落水した時、気を失っていたら?
・見失った落水者を見つけ出すには?
・落水者を引き上げる手順は?
・落水者がPLBを持っていなかったら?(作動しなかったら?)
・救助後、落水者を手当てする方法は?

 この数年、日本でもヨットの海難事故が連続しているのは、みなさんもご存知のとおりです。「(日本では使えない)PLBがあれば助かったのに」というあまりにも悲しい事態だけはなんとしても避けたく、そのためにもオフショアに出るには、乗組員の知識共有、救助トレーニングは必須といえます。

 これからヨットレースのシーズンです。ディンギーセーラーもクルーザーセーラーも、いまいちど、チームや仲間と安全について話し合ってみてはいかがでしょうか。

Clipper Round The World Yacht Race
 クリッパー世界一周ヨットレースは、世界ではじめて単独無寄港世界一周をはたしたロビン・ノックス・ジョンストン卿が提案した「アマチュアセーラーによるフルクルー世界一周レース」です。第1回大会は1996年に開催されました。クルーは公募され、現在は70フィートの同型艇12艇を使っておこなわれています。現在進行中のヨットレースは2013年10月にイギリス・ロンドン(テムズ川)を出発。ブレスト(仏)、リオデジャネイロ、ケープタウン、アルバニー(豪)、シドニー、ホバート、ブリスベン、シンガポール、青島、サンフランシスコ、パナマ、ジャマイカ、ニューヨーク、北アイルランド、オランダを経由して、ロンドンへ戻ります。
http://www.clipperroundtheworld.com/

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